出資額限度法人

持分の定めのある医療法人社団の出資持分には、払戻請求権と残余財産分配権が存在します。

払戻請求権は、出資持分を持つ社員が退社する際に出資持分に応じて払戻しが受けられる権利をいい、

残余財産分配権は医療法人が解散する際に、残余財産について出資持分に応じて分配を受けられる権利をいいます。

この払戻額や分配額を定款において当初の出資額に制限する医療法人を出資額限度法人といいます。

一般的な定款では、「出資額に応じて払戻しを請求できる」と定められていることが多く、

原則として、純資産の時価に基づいて計算されます。

こうなると、長い期間にわたって利益を出してきた医療法人や多額の含み益をもつ資産を有する医療法人は

純資産の時価も大きくなり、自ずと払戻額は大きくなると予想されます。

そのため、払戻しに応じることで、経営状況が悪化することもあり得ます。

そこで、払戻額及び分配額の金額を定款にて、当初の出資額に制限することにより、医療法人の財産の流出を防ぐことができます。

なお、当初の出資額に制限されるため、出資者が受ける経済的利益も当初の出資額ということになりますが、

それに応じて、出資持分の相続税評価額も当初の出資額になるという訳ではないので留意が必要です。

 

※定款の記載例

(限度のない一般的な定款)

社員資格を喪失した者は、その資額に応じて払戻しを請求することができる。

 

(出資額限度法人の定款)

社員資格を喪失した者は、その出資額を限度として払戻しを請求することができる。