学校法人会計と企業会計の違い
学校法人と一般企業はまず、その活動目的が大きく異なります。
一般企業が営利活動を目的としているのに対して、学校法人は教育研究活動を目的としています。
このため、係る会計もその目的が異なります。
企業会計は営利目的の事業活動の成果と財政状態を利害関係者に開示するものですが、学校法人会計は学校経営における教育研究活動の健全性の程度を財務面から測定し開示するものです。
(1)財務諸表の体系
それぞれの主な財務諸表は次の通りです。
学校法人会計:資金収支計算書、事業活動収支計算書、貸借対照表
企業会計:貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書
上記諸表は次のように対応しています。
資金収支計算書:キャッシュフロー計算書
事業活動収支計算書:損益計算書
貸借対照表:貸借対照表
(2)資金収支計算書
資金収支計算書は教育研究活動を示した全ての資金の収入と支出を明らかにして、資金の顛末をあらわした計算書であり、キャッシュフロー計算書は資金の収支を三つの区分に分けて表示し、期末資金残高を表示したものです。なお、資金収支計算書は資金の入出金をそのまま記録するのでなく、発生主義で記録したものに、「収支は確定しているが、まだ入出金はされていない」期末未収入金や期末未払金などの調整を加えます。
(3)事業活動収支計算書
事業活動収支計算書は事業活動収入と事業活動支出の均衡状態を明確にするものであり、計算技術的には損益計算書とあまり変わりありません。しかし、本質的に違う点として、「基本金組入」があります。学校法人会計基準第29条では、「学校法人が、その諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するために維持すべきものとして、その事業活動収入のうちから組み入れた金額を基本金とする。」と記されています。若干の語弊はありますが、極めて端的にいえば、「将来的に必要となる資産に係る支出を予め見越して「基本金組入額」とし、そのうえで収支の均衡状態を明らかにする。」ということになります。また、学校法人会計においては、利益の追求を目的としていないため、収支差額が大きくなることは望ましくありません。収支差額がマイナスになっていることは当然ですが、大きくプラスになっている状態も望ましいとは言えません。収支が均衡している状態が理想とされています。
(4)貸借対照表
どちらも名称は同じですが、科目の配列法が異なります。学校法人の主要な財産は固定資産から構成されているので、固定資産から配列される「固定性配列法」が採用されていますが、企業会計では、流動資産から配列する「流動配列法」が採用されています。また、学校法人では資本金という概念はありません。前述の通り、基本金は存在し、名前は似ているものの、その性質は全く異なるものです。学校法人会計では、基本金と繰越収支差額により純資産の部が構成されています。