合併の税務

M&Aの手法には、株式譲渡、株式交換、会社分割など様々な手法がありますが、

今回は合併について、その税制の概要を取り上げたいと思います。

 

■合併とは

合併とは、2以上の会社が1つの会社となり、消滅する会社の権利義務の全部を、

他の会社に承継させる行為をいいます。

合併には、吸収合併と新設合併の二つがありますが、吸収合併を例にとった場合、

消滅する会社を消滅会社(被合併法人)、承継する会社を存続会社(合併法人)といいます。

 

■合併税制のポイント

①合併をする場合には、原則として被合併法人の移転資産・負債を時価で譲渡するものとして

取り扱う(非適格合併)

②企業グループ内の合併など、一定の要件を満たす場合には被合併法人の移転資産・負債

は帳簿価額を引き継ぐ(適格合併)

③被合併法人の株主にも課税関係が生じるケースがある。

 

■被合併法人の課税関係

上記の通り、合併の際には、原則として被合併法人から合併法人に移転する

資産・負債については、時価で譲渡するものとして取り扱われます。

従って、被合併法人においては、移転資産について譲渡益又は譲渡損が発生します。

一方、適格合併の場合には時価ではなく帳簿価額で移転するものとして取り扱われます。

従って、移転資産の含み損益が実現しないこととなり、含み損益に対する課税が繰り延べ

られることとなります。昔から保有している土地などは時価が大きく上がっている可能性が

あるため、含み益に対する課税が繰り延べられる適格合併の方が、税負担上、

有利に働くケースもあります。

 

■合併法人の課税関係

合併法人は非適格合併の場合には被合併法人の資産・負債を時価で受け入れ、

適格合併の場合には帳簿価額で受け入れますが、いずれの場合も法人税の課税は生じません。

 

■被合併法人の株主の課税関係

被合併法人の株主については、みなし配当や株式譲渡損益について、課税関係を確認

する必要があります。

合併により、被合併法人の株主は被合併法人株式(旧株)に代えて合併法人株式(新株)

を受け取ることになります。

被適格合併の場合には、旧株を所有する株主が新株を取得する際に、旧株の株主に、

みなし配当が生じることとなります。一方、適格合併の場合には、みなし配当は生じません。

また、旧株に代えて新株以外の資産、すなわち合併交付金等の交付を受ける場合には、

その時点で株に対する投資がいったん清算されたものとして扱われ、旧株の株式譲渡損益

について課税がされます。反対に、旧株に代えて新株のみの交付を受ける場合には、

株式譲渡損益に対する課税はありません。

 

■適格合併となるための要件

適格合併は、合併の前後で経済的な実態に変動がないと認められる場合であり、

下記のケースが該当します。

①企業グループ内の合併

 ●合併法人と被合併法人との間に完全支配関係がある場合

 ●合併法人と被合併法人との間に支配関係がある場合

 ※ともにその他の要件あり

②合併法人と被合併法人が共同して事業を営む合併