クリニックの人間関係/クリニック経営

長く税理士をやっていると税務会計以外の問題にぶつかります。
正解の無い経営判断の助言としてそのとき先生にお伝えした事をまとめました。

1.職員10人くらいまでのクリニックの人間関係は独特です。
大きな会社のように毎年新入社員が入り定年や結婚出産などで退職する人がいて新陳代謝があるわけではありません。
長く勤めている人がいて欠員が出た場合だけ補充が行われます。
役職を与えたわけではなくとも長い人がいつの間にか力を持ってきます。
医師の先生方からは信頼され、後輩のスタッフからは尊敬されます。
その方がご自分の立場を理解していれば互いに尊重しあい、信頼しあいすばらしい職場になります。
しかし、自分の居心地のよさのみを追及し、これを守ろうとし始めると職場は崩壊の危機を迎えます。
自分のみ尊重される事を望むため、他のスタッフの台頭を嫌います。
このため優秀な新入社員に対してはきつく当り退職するように誘導します。
自分だけが仕事を知っている重要な立場でいるため他の人に仕事を教えません。
先生方には自分が退職したらクリニックは運営できませんよと暗に言ってきます。
先生とスタッフの間に入り、先生方に対してもスタッフに対しても情報を操作し自分に都合がよい話をします。
そのため先生と他のスタッフが直接話をしないように仕向けます。
先生はそもそもこういった方を信頼しているので裏で起きていることになかなか気づきません。

 

2.どんなときに気づくのでしょうか。
①新入社員が入社直後に辞めてしまう事が続いたとき
やる気をもって入社した方がすぐに辞めてしまうのは指導をした人など直接接した人が原因と考えられます。
仕事を教えない、きつく当るなど適切な対応をしていない可能性があります。
②採用に口を出すとき
人が足りないので補充をしてほしいと言ってきたのに、いざ採用してみるとあの人は要らないなどと言ってくる場合は注意する必要があります。
自分の立場を脅かすほど優秀な人にはいてほしくないし、かといって足手まといになる方も困ります。
自分にとって都合のよい人を求めています。
③退職をちらつかせて要求をするとき
自分が退職するとクリニックの運営が混乱する事を知っているので、自分の要求を通すために退職をちらつかせます。
給料や休日など自分の待遇を良くしないと退職すると迫ってきます。
重要な仕事を他のスタッフに教えていないので退職されたら確かに混乱してしまいます。
こういった直接的な行動に出たときに、はじめて信頼していたスタッフが自分本位に動いていた事に気づきます。

3.普段からどのように対処すべきでしょうか。
優秀なスタッフだけに集中的に仕事を任せて、あまりできないスタッフに仕事を任せらないという状況が続くと、仕事が多い人は疲弊したり、場合によっては他者より優秀であるからという理由で傲慢になり、発言力が強くなりすぎて、職場の和を乱す要因になります。
一部のスタッフに業務が集中することを避け、経験やスキルの低い方や覚えるのが遅い方でも、必ず長所があるので、敬意をもって、仕事を任せて、失敗が起こっても頭ごなしに叱責するのではなく、ミスの原因を一緒に考え、前向きな言葉をかけて、少しずつでもスキルを高めてもらうと良いです。
また、仕事だけでなく、従業員の権利(有給給休暇の取得や慶弔休暇の取扱など)について、職場のルールとして就業規則等を備えて、経営者・従業員ともにルールを理解して運用することが大切です。
仕事だけしてもらい、最低限の権利を認めないというのでは、従業員は離れてしまいます。

4.その時のために心構えをしましょう。誰が退職しても慌てる必要はありません。
クリニックに限らずどんな会社にもキーになる人物はいます。先生や社長はその人が辞めてしまったら回らないとおっしゃいます。
しかし実際その方が辞めてしまっても潰れた会社やクリニックはありません。
一時的に運営が混乱し、患者様にご迷惑をおかけする事はありますが、それは本当に一時的なことです。
開業時には長く信頼するスタッフもいないところからここまでやってきているのです。
誰が退職しても、その状況は既に経験している事なのです。
本当にこの人がいなければ潰れてしまうというのは、他ならない先生だけです。
先生さえいらっしゃればどんな状況からでも立ち直る事ができます。
残念ながら小さなクリニックでは何年か何十年かに一度スタッフの入替が起こってしまいます。
しかし自信を持って毅然とした態度で対応する事が一番の解決策になります。
なんといってもクリニックは先生のクリニックであってそのスタッフのクリニックではないのですから。

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